■求められる非日常行為としての「霊場巡り」

情報化社会、地域の画一化を指摘されて久しい日本ですが、確かに全体的に見ればそうかもしれません。かつては東京で流行したものが少し遅れて地方で流行する図式や地域固有の商品などが豊かだったのが、いまでは日本全国一斉に同じものが流行り、どこでも同じものが変え、同じ言葉をしゃべるように変わってきています。どの地方都市に行っても町並みや都会部の風景はどこも同じ。地方色を求めようと思うと、限定された観光地に行くか過疎化の進む周辺部の田舎に行かなくてはなりません。このような日常の中で、特に都市部で生活している人たちは、その生活に疲れ、非日常として、あるいは一時の現実逃避的な行動として、日本の古くからの伝統に触れられるところへ行ってみたくなっています。その行動は多くの場合、観光旅行、温泉旅行、イベント参加などの形で行われています。かつては「おのぼりさん」として田舎の人が一時の楽しみの為に東京に出てきて遊んでいたのが、都市が成熟し切った後は、逆に都会の人が「素朴さ」や「自然」や「伝統色」を求めて地方に行っている時代なのです。こうした時代に入った1990年代以降、マスコミでの紹介や著名人の体験談などで次第に注目を集めるようになってきたのが、系統だったいくつかのお寺を巡る「霊場巡り」です。もっとも有名なものは通称「遍路」と呼ばれる「四国八十八箇所巡礼」です。この他に「日本百観音」の霊場巡り、近畿地方を中心にした「西国三十三箇所巡礼」、関東地方一円の「坂東三十三箇所巡礼」、埼玉県秩父地方の「秩父三十四箇所巡礼」も有名で人気があります。代表的な4つを挙げましたが、これらは仏教思想に基づいた宗教的な行為が本来の姿です。しかし、それぞれに観光としての機能も十分にもっていたこと、巡礼する行為は一種の苦行であることから、熱心な仏教信者でなくとも、観光を兼ねた巡礼や、「癒し」「自分探し」「自己啓発」といった目的からこれを行う人が増えています。ここでは、例に挙げた4つの巡礼から日本の国内地域事情を探ってみます。